■利息を怖れすぎず、必要額の利用を検討しよう
子どもの進学を応援はしたいけれど、不足資金を借り入れるのは絶対に嫌だという保護者に会うことがあります。
手元に貯蓄がなく、給付型奨学金の利用をできそうもない状況であるにもかかわらず、利息の高い借金以外の何かいい方法はないかと相談しに来るのです。
結論から言うと、貸与型奨学金の利息は、それほど怖がる必要はありません。
自治体や進学先の大学が貸してくれる奨学金は、無利子であることがほとんどです。つまり、利息はゼロ。借りた金額だけを返せばいいのです。
奨学金制度の代表格である日本学生支援機構の貸与型奨学金は、無利子の第一種と有利子の第二種があるのですが、第二種の人数の枠が多いため、「利息付きの奨学金制度」と理解している保護者もいるようです。
この日本学生支援機構の第二種の利息額を計算するための利率は、上限が1年間あたり3%と法律で決められています。高い買い物である住宅のローンの中には、1年間あたり1%を下回る利率のものもありますから、3%を高いと感じるのは不思議ではありません。
けれど、3%は上限であって、実際の利率はもっと低いのです。世の中の金利(利率)が変化すると、奨学金の利率も連動して変化します。2016(平成28)年度に卒業した人(厳密にいうと、2016年度の3月に奨学金の貸与を終えた人)は、利率固定方式を選んでいた場合0.33%、利率見直し方式は0.01%(最初の5年間)でした。

0.33%の場合の毎月の返還額は1万3,688円で、返還総額は246万4,020円。0.01%だと、同1万3,343円で同240万1,847円になります。
返還開始時の利率は大学卒業時(返済終了時)に決まる仕組みですし、利率見直し方式は5年ごとに利率が見直されますから、借り入れる段階で未来の利率は不明です。不安になるのは、もっともです。
ただ、現在の利率見直し方式は限りなくゼロに近いですし、利率固定方式も1%未満ですから、利息を怖れすぎることはないのです。
貸与型奨学金で気をつけたいのは、借りる元本そのものの額です。月額12万円のコースを4年間利用すると、貸与総額は576万円。返還期間中(この貸与額の返還期間は20年間)の利率がずっと0.01%だった場合、返還総額は576万5,970円ですから、利息はほんのわずかです。しかし、大卒の初任給平均額約20万円から社会保険料と税金を天引きされると、2万4,025円を返還するのは、簡単ではないと思われます。
利息を怖れるよりも前に、借り入れは必要最低額にとどめることと、返済できる経済的な力をつけることを心がけるべきでしょう。
■借りるときは金利の低いものから、繰上返済は金利の高いものから
奨学金と教育ローンはどちらがトクかと問われることもありますが、利率の低いものの方が払う利息が少ないので、おトクです。
利率の他に、保証料や手数料がかかることもありますから、それらも計算に入れて比べるようにします。
繰上返済をするときは、利率の高いものから返すと、将来の利息を減らすことにつながります。
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[菅原 直子]

■プロフィール 菅原 直子(すがわら なおこ)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。教育資金コンサルタントとして公私立高校での保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は250回超。神奈川県を中心に家計や保険の見直しの個人相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。セミナー記録と子育てを含む日々の雑感は、ブログ「湘南らいふでざいん」でどうぞ。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会 http://childmoney.grupo.jp/
FPライフ湘南 http://shounan.michikusa.jp/