保護者のみなさま

中学受験をしてよかったのかどうか?

2018年03月01日

つくし

子どもの中学受験に取り組んでいたときは「なんとか合格させてやりたい」と一生懸命取り組んでいました。その思いはどの受験生の親も同じだと思います。でも当時の自分たちを今から振り返ってみると、果たして「中学受験をする」ということにどういうメリットがあるのか、そのメリットとは他の選択肢と比較してどの程度のものなのか、そういったことを客観的に捉えることはできていなかったような気がします。

子どもが成長し、中学、高校と進学して、子どもの友人や知り合いの子どもの話などいろんな例を聞くにつれて初めて見えてきたこともあるので、最後のコラムとして私たちの考えをまとめてみたいと思います。

まず結論から申し上げると中学受験をしてよかったのか、それとも公立中学に進学して高校受験をした方がよかったのか、それは結局どちらでもよかったのではないか。そのように今では思っています。

息子の場合は入学した中学がとても合っていたようで、大変充実した3年間を送ることができました。やはり同じような学力の生徒が集まっている環境で中学生活を送ることができるのは、大きなメリットだと実感しました。

高校受験がないことも中高一貫校のメリットでしょう。受験がないことでいろんな面で自由度が増します。一例を挙げると海外留学をする場合、夏休みの短期留学でもそれなりの準備期間が必要なので、高校2年生で行くのが一般的です。しかし高校受験がなければ中学生のときから準備ができますから、高校1年生で行くことも可能になるのです。

一方、息子がカナダの公立高校で、世界各国から集まる留学生や移民の子どもなど、多様性のある環境で1年間を過ごした様子を聞いて、日本の同じような学力の生徒が集まっている環境のメリットが果たしてどの程度のものなのか、少し考え直すようになりました。カナダの公立高校は入学試験がありませんから、生徒の学力にはばらつきがあり、大学に進学しない生徒も結構います。移民の子どもで英語が母国語でない生徒もいます。留学生もカナダで卒業を目指す生徒もいれば途中で本国に戻る生徒もいます。いろんな生徒がいる中でも勉強する子はするし、先生もやる気のある子には熱心に教えてくれる。もちろん成績のいい生徒は有名大学に進学します。

多様性のある環境にいると自分の持っている能力を周りが素直に認めてくれる一方、自分には全くない能力を持った人たちに出会うことができます。日本でバイオリンを習っていた音楽教室にはコンクールを目指すような子もたくさんいて息子は目立つ存在ではありませんでしたが、カナダではみんなに褒められソロで弾く活躍の場も与えられて、自信をつけた息子は日本にいるときよりもたくさん練習していたようです。一方、カナダで出会った友人にはゴルフで70台のスコアを出す子もいるし、スキーにいくとバックフリップをしている人が普通にいたり、ドイツから来た留学生はクロスカントリーが得意だったりと「あいつすごいな」、そんな風にお互いを尊敬しあうことが自然とできる環境だった。金子みすゞの詩『わたしと小鳥と鈴と』に出てくる「みんなちがって、みんないい」、それが身をもって体験できたのだと思います。

勉強の面でも数学は日本人は得意、英語についても欧州や中南米からの留学生は文法がいい加減で、日本人の方がまともなぐらいだそうですが、英語の文章を書く授業では彼らにかなわない。どうやら彼らの国では文章の書き方、主題を伝えるためにどのような内容を盛り込みどのような順序でどう組み立てるのか、どのような表現は避けなくてはいけないのか、といったことを母国語でしっかり教わっているようなのです。そういえば子どもを日本の学校に通わせている外国人の同僚と子どもの教育について話したときに「日本の学校は文章を書く宿題がほとんどないね」と言っていたことを思い出しました。

どちらがいいのかという問題ではなく、それはそれぞれの国の教育に対する価値観の違いだと思います。でもその違いを経験し、日本にいるときには自分は英語が得意だと思い込んでいた息子が、自分にはまだまだ足りないことがあることを知ったことは、英語そのものを習得したことよりも価値のあることではないかと思います。


一方、自分とは違うバックグラウンドや価値観を持つ人たちでも、友だちになってみるとやっぱり同じティーンエイジャーですから同じようなことを考えていて共通の話題もたくさんあって仲良くなれる。そこは国を超えて普遍的なものがあることにも気付いたようです。それもやはり多様性のある環境に身を置かないと気付けないことではないでしょうか。

同じような学力の生徒が揃っていることはいいことのようで、行き過ぎると多様性がないという意味では逆にデメリットかも知れません。ほとんどの生徒が同じ大学を目指しているような環境は、ある意味とても狭い世界ではないかと思います。

息子が通っていた小学校にはアスリートを目指すような子やプロ棋士を目指しているような子もいましたし、お父さんのお店を継ぎたいと言っていた子、お父さん、お母さんが外国人の子どももいました。それを考えると息子がもし公立中学に進んでいたとしても、それはそれで多様性のある環境の中で楽しい3年間を送ることができたのではないか、そう思うようになりました。

実際に進路の面でも息子の学校に高校から入ってくる生徒のレベルから考えると、もし息子が公立中学に進んで高校受験をしていても、十分合格できたのではないかと思えるのです。小学生の時に無理をして受験勉強をしなくても、中学に入ってからがんばっていれば同じぐらいのレベルの高校には入れた可能性が高い。15歳になれば自分の行きたい高校を自分で選ぶことができたでしょうから、その方がむしろ健全だったのかも知れません。

今から振り返ってみても「どの中学に入るのか」ということはそれほど重要なことではなかった。もちろん合う、合わないはあるにせよ、どの学校にもいいところもあればそうでないところもあります。どの学校に入ったとしてもそれなりに楽しい3年間を送ることはできるし、与えられた環境でその子なりに成長し、次の進路につなげていくことはできるのです。

それでも中学受験をしたことは今でもよかったと思っています。いろいろと工夫をすることで小学生らしい生活を極力犠牲にしなくても受験勉強に取り組むこともできたし、合格を目標に親子で楽しみながら学ぶことができた。それを通して「学習習慣をつけること」や「自信と意欲を育てること」ができたのではないか、そういう意味ではとてもよい経験だったと思うからです。

“かずとゆか”さんのこれまでの記事 今月の"家族のテーマ"バックナンバー
小学生のうちに身に付けておきたい力【その1】―毎日、勉強机に座る習慣
小学生のうちに身に付けておきたい力【その2】―自信と意欲
小学生のうちに身に付けておきたい力【その3】―知的好奇心
小学生のうちに身に付けておきたい力【その4】―コツコツとがんばる力
我が家の子育てと教育方針【その1】―中学受験をしてもバイオリンを止めずに続けさせた理由
我が家の子育てと教育方針【その2】―自分の考えを持つということ
我が家の子育てと教育方針【その3】―楽しませることの大切さ
我が家の子育てと教育方針【その4】―社会性が何よりも大切
我が家の子育てと教育方針【その5】―人とは違うことをするということ
楽しみながら親子で学ぶためにできること【その1】―とにかく実物を見せること
楽しみながら親子で学ぶためにできること【その2】―小学生新聞購読のすすめ
楽しみながら親子で学ぶためにできること【その3】―国内旅行をしよう
楽しみながら親子で学ぶためにできること【その4】―生き物を飼ってみる
楽しみながら親子で学ぶためにできること【その5】―身近なエンタメを活用する
楽しみながら親子で学ぶためにできること【その6】―算数はどうしたらいい?

[かずとゆか]


■プロフィール かずとゆか


フルタイムの共働き夫婦。執筆担当の夫はずっと塾には通わず公立小中から県立高校を経て東大・京大現役ダブル合格。高校在学中には交換留学生としてオーストラリア・クイーンズランド州に1年間滞在した。東京大学工学部卒業後、外資系証券会社に入社、数社を渡り歩き現在に至る。
取材担当の妻は都内私立中高一貫の女子校から私立大学工学部卒業の当時は希少だった理系女子。邦銀のロンドン拠点赴任を経て現在は外資系証券会社に勤務。仕事は絶対に辞めないというこだわりのもと子育てや家事との両立を目指している。子育てが一息ついた現在は社内の東北被災地ボランティアを通し社会貢献にも努めている。
勉強は塾に行かなくてもできるという信念から、息子も大手進学塾には通わずに中学受験に挑戦。少年野球とヴァイオリンを最後まで続けながら都内国立中学に合格した。ブログ「大手進学塾に行かない共働きの中学受験」、著書「小学生生活を犠牲にしない中学受験」を通して健全な小学生生活を犠牲にしない中学受験を提唱。

大手進学塾に行かない共働きの中学受験
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