保護者のみなさま

我が家の子育てと教育方針【その3】―楽しませることの大切さ

2017年06月01日

シャボン玉で遊ぶ子

先月、カナダへ留学中の息子が所属するオーケストラのコンサートがあるというので、バンクーバーまで聴きに行ってきました。その直前の練習も見学させてもらったのですが、とにかく指揮者の先生が明るくて情熱的で、常に生徒たちが笑顔を見せている。先生も生徒たちも本当に音楽を楽しんで演奏している様子が見てとれました。

かといって決して「子どもの発表会」レベルではないのです。プロのオーケストラの下部組織ということもあって演奏の完成度は高く、タクトを振るのはもちろんプロの指揮者、きちんと入場料をとっても観客席はほぼ満席でした。

日本で中学生のときまで所属していた音楽教室のオーケストラもとてもよかったのですが、先生は少し厳しく、ちょっとピリピリした雰囲気があったことは否めません。ひとりでも音程がずれたり、弓の動きが逆になったりするととても目立ちますから、ある程度厳しくするのは仕方ない、そんなものだろうと思っていました。

ところが今回のコンサートが終わった後にお世話になっているホームステイ先の両親とお話して、はっと気付かされたのです。

「指揮者の先生は本当に子どもたちを楽しませて盛り上げていますね」
「やっぱり子どもたちがここまで完成度の高い演奏ができるようになるには、かなりの練習、訓練が必要でしょ。でも子どもたちはそれが楽しければ一生懸命やるし、努力も苦にならないのよ。だから先生は子どもたちを楽しませようとするし、彼自身もそれを楽しんでいるわ」

やはり西洋では「子どもには楽しませることが大切」、そういった考え方が、教育関係者だけでなく一般家庭の親にも浸透していることを改めて実感しました。

そういえば海外のオーケストラが来日した際にコンサートを聴きに行ったときも、指揮者も演奏家も楽しそうに演奏していて、なんだかその気持ちが観客である自分にも伝わってくるような気がしたことを思い出しました。また海外でコンサートやミュージカルを観ると、とにかく観客が盛り上がるのでそれが楽しさを増幅しているように感じたこともありました。

こういうことを経験すると、西洋人は「何事も楽しむことに長けているなあ」とつくづく思わされます。一方、定年退職後に何をしていいのかわからず悩む人がいるとか、自分が何をしたいのかが分からない若者がいるという話を聞くと、日本人はいったい何が楽しくて生きているのだろうか。これは単なる国民性で片付けられる違いではない。ものごとを「楽しめること」というのは人としてのひとつの能力であって、日本人は西洋人と比べて、その「楽しむ能力」が欠如しているのではないかという気さえしてくるのです。

そして他の能力と同様、「楽しむ能力」も子どものころからきちんと育ててあげないと身に付かないのではないかと思います。子どものころに「楽しかった」と思える経験をたくさんしていないと、何事も素直に楽しめない大人になってしまうのではないでしょうか。

そういえば私たちが非常に共感を覚えた『子どもへのまなざし』(佐々木正美著 福音館書店、1998年)という育児本にこういったくだりがあります。

「将来、幸せになるということもだいじですけれど、それよりもはるかに何倍も、いま、この瞬間を、この子が幸せにすごすことができるようにという育児のほうがいいのです。この子の将来をうんと幸せにしてあげるために、いま、がんばらせておこうというのは、子どもが幼いうちは往々にしてよくないのです。
いま、この瞬間を、幸せにしてあげよう、その積み重ねが、この子の幸せになるのだという育て方がいいのです。そして理屈ぬきで、育児を自然に楽しんでできれば、これはもう理想的なお母さんだと思いますね。」

でも日本では、何事も上達するには厳しく指導しなくてはいけない、将来成功するためには苦痛に耐えて努力しなくてはいけない、といったことがまだまだ信じられていています。 むしろそういった「厳しい指導」や「苦痛を伴う努力」が美化されていたりもします。

「難関中学に入るのが一流大学への近道、だから中学受験に合格するまでは他のことは我慢させて受験勉強に集中させる、今は辛くても将来のためだから」

私たちには絶対に受け入れられない考え方でした。 息子が幸せな人生を送るためには「楽しむ能力」を育てる方がはるかに大切、そう考えていたからだと思います。

“かずとゆか”さんのこれまでの記事 今月の"家族のテーマ"バックナンバー
小学生のうちに身に付けておきたい力【その1】―毎日、勉強机に座る習慣
小学生のうちに身に付けておきたい力【その2】―自信と意欲
小学生のうちに身に付けておきたい力【その3】―知的好奇心
小学生のうちに身に付けておきたい力【その4】―コツコツとがんばる力
我が家の子育てと教育方針【その1】―中学受験をしてもバイオリンを止めずに続けさせた理由
我が家の子育てと教育方針【その2】―自分の考えを持つということ

[かずとゆか]


■プロフィール かずとゆか


フルタイムの共働き夫婦。執筆担当の夫はずっと塾には通わず公立小中から県立高校を経て東大・京大現役ダブル合格。高校在学中には交換留学生としてオーストラリア・クイーンズランド州に1年間滞在した。東京大学工学部卒業後、外資系証券会社に入社、数社を渡り歩き現在に至る。
取材担当の妻は都内私立中高一貫の女子校から私立大学工学部卒業の当時は希少だった理系女子。邦銀のロンドン拠点赴任を経て現在は外資系証券会社に勤務。仕事は絶対に辞めないというこだわりのもと子育てや家事との両立を目指している。子育てが一息ついた現在は社内の東北被災地ボランティアを通し社会貢献にも努めている。
勉強は塾に行かなくてもできるという信念から、息子も大手進学塾には通わずに中学受験に挑戦。少年野球とヴァイオリンを最後まで続けながら都内国立中学に合格した。ブログ「大手進学塾に行かない共働きの中学受験」、著書「小学生生活を犠牲にしない中学受験」を通して健全な小学生生活を犠牲にしない中学受験を提唱。

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